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Japanische Klassiker mit Furigana

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かばんらしくないかばん

鞄らしくない鞄

海野 十三

Lesen Sie 鞄らしくない鞄 (かばんらしくないかばん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.653 Zeichen · 73 Bildschirme

Aozora Bunko

そのとき勝手の方で電話のベルが鳴りだした。婆やさんはそれに気づいて勝手の方へ駆けこんで行く。やがて婆やさんが再び駆け出して来て、酒田へ電話を取りつぐ。そこで酒田は寝椅子からむっくり起上って、婆やと共に勝手の方へ行く。電話機は勝手の廊下の隅にあって、そこは暗いので、婆やさんは電灯を急いで吊りかえなければならなかった。

こうして僅か十分足らずの時間、お座敷の方を空虚にして置いただけで、電話が終ると酒田と婆やさんとは再びお座敷の方へ戻って来て、婆やさんは雨戸の残りを戸袋から繰り出すし、酒田はラジオをちょっとひねって、そして男女合唱がとび出して来ると、すぐスイッチをひねって消し、それから煙草をつけて安楽椅子へ腰を下ろしたんだが、忽ち彼はバネ仕掛の人形のようにとびあがった。

「あれッ、ここに置いてあったトランクが見えないぞ。……トランク、どこへ持って行った?」

それからの騒ぎを一々克明にここに写している遑はない。とにかくかのトランクは煙のように消えてしまったのである。庭の植込みに隠れていたかもしれない泥坊の詮議や、一応は疑われた婆やさんのこと、酒田の物忘れについての疑惑など、いろいろのことが入りくんでややこしくなったのであるが、誰しもまさかトランクが悠々と絨氈の上から腰をあげ、明け放しの硝子戸の間から、朧月夜の戸外