Japanische Klassiker mit Furigana
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かばんらしくないかばん
鞄らしくない鞄
海野 十三
Lesen Sie 鞄らしくない鞄 (かばんらしくないかばん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.653 Zeichen · 73 Bildschirme
その赤見沢博士は、肘懸椅子に凭れ、頭を後の壁につけていたが、その恰好がへんにぎこちなかった。博士はまだ意識混沌としているので、あのような恰好をしているのであろうが、両眼を大きく明けているのが、ちと腑に落ちかねる。
そのときであった。小山すみれが脚立から下りて、二本の綱を引張って、赤見沢博士の傍へ来た。その綱は、天井から垂れていた。よく見ると、天井には滑車がとりつけてあり、綱はそれに掛っていて、上下自在になっていることが分った。
小山女史は、その綱の一本を、いきなり赤見沢博士の頸にぐるぐるっと巻きつけた。顔色一つ変えないで……。美貌の男は、あいかわらずにこにこ笑っている。小山嬢は綱に結び目をつくると二三歩うしろへ身を引いて、もう一方の綱をぐんぐんと下にたぐった。すると博士の頸に搦みついている綱がぴーンと張った。それでも小山嬢は、自分の手にある綱をぐんぐんと下にたぐった。博士の身体が椅子から浮きあがった。小山嬢が綱をたぐるたびに、博士の身体は上へ吊りあげられた。博士の絞首刑である。それを自らの手によって行っている小山すみれの顔は、始めと同じく無表情で、悔恨の色もなければ憎悪の気も見えない。