Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.621 Zeichen · 25 Bildschirme
初鰹
「船でい」
「おお、船だ船だ」
「鰹をやれ、鰹をやれ」
「運のいい畜生だ」
「おうい、和次郎ぬし、船だぞい、おも舵だ」
文久二年四月十七日、伊豆国賀茂郡松崎村の鰹船が焼津の沖で初鰹を釣り、船梁もたわむほどになって相模灘を突っ走る。八挺櫓で飛ばしてくる江戸の鰹買船に三崎の沖あたりで行きあうつもり。
ちょうど石廊岬の端をかわし、右に神子元島の地方が見えかかるころ、未申の沖あいに一艘の船影が浮かびあがって来た。
海面は仄白くなったが、まだ陽はのぼらない、七ツすこし前。
舳で、朝食の支度をしていた餌取の平吉がまっさきに見つけた。
鰹の帰り船が沖で船にあうと、最初に行きあった船に初鰹をなげこんでやるのがきまりになっている。鰹船の祝儀といって、沖で祝儀をつけてやることが出来れば、ことしの鰹は大漁だと縁起をいわう。
櫓杭に四挺櫓をたて、グイと船のほうへ舳をまわす。
「やアイ、船え――」
「おう、その船、初鰹を祝ってやるべえ」
払暁の薄い朱鷺色を背にうけて、ゆったりとたゆたっているその船。
妙に船脚のあがった五百石で、大帆柱の帆さきと艫に油灯の赤い灯がついている。