Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.712 Zeichen · 29 Bildschirme
で、広座敷の入口のほうをふりかえって見ると、控座敷と広座敷のちょうどあいだくらいのところで、佐原屋が俯伏せになって倒れている。
「おッ!」
「これは!」
口々に叫びながら、おどろいて、五人が椅子から立って、ドヤドヤと佐原屋のほうへ駈けよって、
「こんなところへ寝ころんでしまっちゃいけないな……どうなすったんだ」
「おい、どうしたんだ、佐原屋……」
あわてて引きおこしてみると、佐原屋はもう絶命していた。
よほど苦しかったのだろう、手の指を蟹の爪のように曲げて絨毯にくいこませ、目玉が飛びだすばかりにクヮッと眼を見ひらき、どす黒い舌を歯で噛んで、そこから流れだした血が頬のほうへまっ赤な筋をひいている。
佐原屋清五郎は頸に巻きつけている蕃拉布で、力まかせに頸を縊められて死んでいた。
燈灯が消えてから、早附木で灯をともすまでの、ほんの三分のあいだの出来事だった。
水飛沫
町医者を呼んで、さまざまに手を尽してみたが、佐原屋はとうとう生きかえらない。
窓の下は、石崖からすぐ川で、水面から檐まで三十尺もある二階座敷。
廊下のほうは、太鼓なりの渡り廊下のはしから階下へおりる階段へつづき、片側はずっと砂壁で、二階座敷はここだけで行きどまり。