Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.494 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

どうにも手持無沙汰でやり切れなくなり、うるさく手をたたきながら、

「おいおい、小波さん、引っこんでしまった切りじゃしょうがねえ。化粧なおしなんざ後でもいいから、ともかく、酒を持って来てくれ。……酒がねえぞウ。おーい、酒、酒!」

大りきみに力んで、テッパイに怒鳴り散らしているところへ、渡り廊下のほうに、二三人の足音がドサドサと近づいて来た。

瓦灯口の襖をサラリと引きあけて、ヌッと顔を現したのは、思いきや、これが顎十郎の仇役。互いに一位を争う、これも捕物の名人、南町奉行所の控与力藤波友衛。後へつづく二三人は、巻羽織やら磨十手。髪をおどろに振りみだした三太夫ていの男をひとり中にはさんで、ズカズカと茶室の中へ入りこんで来た。

顎十郎は酔眼朦朧。春霞のかかったような、とろんとした眼つきで藤波の顔を見あげながら、素頓狂な声、

「いよウ、藤波さん、これは、これは、珍客の御入来。やはり、あなたもポチポチの組ですか。……そんなむずかしい顔をして突っ立っていないで、まア一杯おやんなさい。間もなく座持ちのいい乙姫さまが立ち現れて来ます。まアどうか、お平らに」

藤波は、痩せた権高な顔を蒼白ませ、立ったままジロジロと顎十郎の顔を眺めていたが、やがて噛んで吐き出すように、