Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.435 Zeichen · 27 Bildschirme
丸一疋で持って行ったら見世物にもなろうが、切りきざんでしまったらなんの役にも立ちゃしない」
「おれも先刻からそれを考えているンだが……」
と言って、伏目になって考えこんでいたが、だしぬけに、阿古十郎が、
「おい、ひょろ松、一昨日の晩、お前は伏鐘をどこへ追いこんだと言ったっけな」
「芝浦です」
「なるほど。それで、この鯨はどこへあがったンだ」
「芝浦です」
ひょろ松は、急に横手をうって、
「あッ、畜生、すると、伏鐘のやつは……」
顎十郎は、ニヤリと笑って、
「海岸まで追いつめてもいねえはずだ。あいつは切羽つまって、ちょうど陸あげした鯨の口ン中へ飛びこんで隠れていやがったんだ。この鯨が見世物になろうとは、さすがの伏鐘も気がつかなかったろう。入ったまではいいが、気がついて見ると、千、二千という見物にかこまれて、出るも這いだすもなりゃアしねえ。入る時は無我夢中で飛びこんだろうが、小屋へ運ばれて来てから、鯨が寝ころばねえように杭と綱でしっかりと頭を留められ、中から口を押しあけることもどうすることも出来なくなった。乾児のほうじゃ、重三郎が鯨の中へ飛びこんだことだけは知っている。