Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.904 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

「なにしろ、そういういい声なンで、お店の番頭や丁稚が耳の保養のつもりで待ちかねていて、きょうの鮨売は昨日のよりはいい声だとか渋いとかと評判をするンです。そういうわけですから、ふれ声の中になにか気障な文句でもまじったら、誰にしたって聞きのがすはずはない。佐吉にしろ、新七にしろ、また八太郎にしろ、その日その家の近くでふれ声を聞いていたのは一人や二人じゃないンですから、これには間違いはありません」

「おやおや、それじゃまるっきり手も足も出やしない。……すると、なんだな、ひょろ松、こりゃア神隠しだ」

「じょ、冗談。……そんなこと言ってなげ出してしまっちゃ困ります。なんとか、もうすこし考えて見てください」

「それまでに言うなら、もうすこし頭をひねって見ようか」

と言って、腕を組み、

「おい、ひょろ松、鮨売は娘のそばに近寄らなかったろうが、しかし、娘たちはその鮨を喰ったろう」

ひょろ松は、えッと驚いて、

「ど、どうしてそれをご存じです」

「どうしてもこうしてもない、そうでなけりゃア、筋が通らないからだ」

「……お察しの通り、実は、こういったわけだったンです。三人の鰭売は、なるほど塀ぎわにも裏木戸にも店さきにも寄りはしませんが、町角のよっぽど遠いところに小僧が先まわりをして鮨売を待っていて、番頭たちのお八ツの鮨を買って旦那や大番頭