Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.960 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

府中

「……すみませんねえ。これじゃ冥利につきるようで身体がちぢみます」

「やかましい、黙って乗っておれというのに」

駕籠に乗っているのは、ついこのあいだまで顎十郎の下まわりだった神田鍋町の御用聞、ひょろりの松五郎。

かついでいるほうは、もとは江戸一の捕物の名人で、今はただの駕籠屋。仙波阿古十郎あらためアコ長。相棒は九州の浪人くずれで雷土々呂進こと、とど助。

とど助はどうでもいいが、顎十郎のほうは、ひょろ松にしてみればなんといっても以前の主人すじ。いわんや、捕物御前試合で勝名のりをうけたほどの推才活眼、師匠とも先生ともあおいできた仙波阿古十郎。

むこうは、ふっつりと縁を切ったつもりかも知れないが、こっちは切られたとは思ってない。駈けつけて行って袖にすがれば、いつでも智慧を貸して貰われると思っている。

本来なら、自分のほうが棒鼻につかまって引っかついで行くべきところを、こちらが師匠にかつがれて駕籠の中で膝小僧をだいて揺られているというんだから、これは、どうも気がさすのが当然。

もっとも、ひょろ松のほうで、おい、駕籠と大束をきめこんだわけじゃない。