Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.783 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

忘れても右手に廻るな、左へつけ、左へつけ」

「ありがとうございます」

「じゃあ行くぜ。……叔父貴には、きっとないしょにな。……頼むぜ」

「わかっております」

たちかけた夕靄の中へ、それで、貧乏浦島、ひょろりと消えて行った。

すこし離れた上手の渚で、庄兵衛が、おい、ひょろ松、鷹羽鯛がついた、と大騒ぎをしている。

鎌いたちの主、明石新之丞がつかまった夜、花世が、顎十郎にたずねた。

「あたしだとても、喉ばかり切る鎌いたちなどあろうとは思いませんでした。でも、まだきいたことのない殺手で、かいもく見当がつきませんでしたが、いったい、どんな手懸りでこうすらすらと追詰めましたの」

顎十郎は、へへと笑って、

「訳も造作もないことさ。……いったい、おれはとんちきでの、検死などに立合わされるとひどく気が浮ついて、おれの眼玉はとかくとんでもねえところへ行きたがる、悪いくせさの。……『船松』の横の溝でさむらいが死んでいたのを見たとき、みなが鼻の先を赤むけにするほど、地べたばかりかいさぐっている。……おれは今いったような訳で、のほんと朝の空を仰いでいると、死骸の真上の、塀からつき出した松の枝に、長さにして凡そ五六寸の絹糸のようなものがひっかかって、きらきら光っている。