Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.248 Zeichen · 27 Bildschirme
「さあ、どうかな……ともかく、そいつは、間もなくここへやって来る」
「ここへ……あの、やって来ますか」
「女だ……まず、芸者かな。……その証拠を見せてやるから、もう一度、長火鉢のそばへ寄れ」
ひょろ松を長火鉢のそばへすわらせ、じぶんは立ちあがって、行灯をすこし上手へ移し、
「こうすると、火鉢の灰の中に、なにかキラリと光るものが見えるだろう。……ほじくり出して見ろ」
ひょろ松は、いきなり手を突っこんで灰の中から光るものをつまみあげ、
「お、こりゃア、銀簪!……角菱と三蓋松を抱きあわせた比翼紋がついております」
「ちょっと詮索すりゃア、すぐ持ちぬしが知れる品。……どうしたって、このままに放ってはおけまい」
「なるほど、千賀春は鬘下地。……こりゃア、千賀春のものじゃありません……それに、こうして脚をしごいて見ると、指にべっとりと髪油がつく。たしかにきのう今日のもの。……すりゃア、こりゃアお言葉どおり、たしかに来ます」
やや遠い露路口で、かすかに溝板がきしる音がする。
二人は目を見あわせると、銀簪をもとの通り灰の中へ投げいれ、行灯を吹きけして勝手へはいり、障子のかげで息を殺す。