Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.248 Zeichen · 27 Bildschirme
障子のこちらにいる顎十郎、なにがおかしいのか、高声でへらへらと笑い出した。
藤波は、急に眼じりを釣りあげてキッと障子のほうを睨みつけ、
「おお、そこにいるのは仙波だな、そんなところで笑っていないで、こっちへ出て来なさい。……ここまで追いつめたのは、素人の手のうちとしちゃ、まず上出来。……この勝負は相引だ」
勝手の障子をサラリとあけると、顎十郎、揚幕からでも出てくるような、気どったようすで現れてきて、
「これはこれは、藤波先生。……どうも、あなたは人が悪いですな。ちゃんと亥刻とお約束がしてあるのに、こんなお早がけにおいでになるんで、だいぶ、こちらの手順が狂いましたよ」
といいながらドタドタと小竜のほうへ歩いてゆき、
「……もしもし、小竜さんとやら……なにも、そんなところでヒイヒイ泣いてるこたァないじゃないか。……そこに突っ立っている先生にちゃんと言ってやりなさい。……濡れ紙で口をふさいだなどと飛んでもない。……あたしが来た時、千賀春さんはもう死んでいたんです、と立派に言いきってやんなさい。……余計なことは言う必要がない……掛けあいに来たのだろうと、ごろつきに来たのだろうと、いやみを言いに来たのだろうと、あるいはまた、しんじつ、殺す気で来たんだろうと、そんなことは一言もいりません。