Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.248 Zeichen · 27 Bildschirme

Aozora Bunko

千太は、こうっと、と言いながら、科でなぞって見て、

「あッ、左手でした」

「千賀春は、左ききか」

「そ、そんな筈はありません」

「妙じゃねえか」

千太は、眼を据えて、

「な、なるほど、こりゃア、おかしい」

急に、膝を乗り出して、

「すると、殺っておいて、誰か手に持たせた……」

「まずな。……殺ったやつは、たぶん、左ききででもあったろう」

「ありそうなこってすね。しかし、どうして殺ったもんでしょう。いまも申しあげた通り……」

「鵜の毛で突いたほどの傷もねえ、か。……ところで、見落したところが一カ所ある筈だ」

「見落し。……これでばッかし飯を喰ってる人間が五人もかかって、いってえどこを見落しましたろう」

ズバリと、ひとこと。

「乳房のうしろ」

千太は、ひえッと息をひいて、

「いかにも、……そこにゃア気がつかなかった」

藤波は、うなずいて、

「あんなものがぶらさがっていりゃア、誰だって、こりゃア気がつかねえ。……どうも、がてんがゆかねえから、最後に、あの、……袋のような馬鹿気たやつを、ひょいともたげて見ると、乳房のうしろに針で突いたほどの、ほんの小さな傷がある。……おれの見たところでは、たしかに、鍼痕。