Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.327 Zeichen · 43 Bildschirme
二升入りの角樽を投げだすように坊主畳の上へおくと、首すじの汗をぬぐいながら、
「あなたのいどころを捜すので、お曲輪中の大部屋をきいてまわりましたよ。……脇坂の部屋へ行きゃ榎坂へ行った。……榎坂へ行きゃ、土井さまの部屋へ行った。……この角樽をさげて汗だくだく、足を擂木のようにしてようやく捜しあてたのに、いねえと言えはないでしょう」
顎十郎は、長い顎のさきを撫でながら、のんびりした声で、
「お前はとかく厄介なことばかり持ちこむんで恐れる。……見りゃあ、角樽なんかかつぎこんだようだが、これは悪いきざしだ。また、いつものように、折入ってひとつ、お願い、と来るのじゃないのか。……おれは、もうごめんだぜ」
ひょろ松は喰いさがって、
「そう早く話がわかってくださりゃ、これに越したことはありません。……じつは、お見とおしの通りなんで。……ときに、これは、昨日、品川へついたばかりの堺の新酒。……わずかばかりですが持ってまいりました」
顎十郎は、いまいましそうな顔で、
「長なが旱つづきのところへ、灘からついた新酒というんじゃ、聞いただけでも待ちきれねえ」
「まあ、ひとつ召しあがれ」