Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.028 Zeichen · 30 Bildschirme

Aozora Bunko

ひとりは備中の時沢弥平、もうひとりは、越前大野の土井能登守の嫡子土井鉄之助利行。が、このほうは、もう十年も前からこの世にいないひと。それにしても時沢弥平が、この俺に斬ってかかる因縁はないはずだが……。奇態なこともあるものだ。……俺のいたところは土手のおり口だったから、岡埜の裏手までは、すくなくとも六間はある。どれほど精妙な使い手でも、俺に斬りかけておいて、あれだけのところを、咄嗟に飛びかえり、建物のかげに身をかくすことなど、いったい出来るものではない。土手下まで駈けおりたのが大幅で三歩、時間にすればほんのまばたきふたつほどする間。そこで振りかえって見れば、もう人影はない。とてもそんなことが出来ようわけがない。とすると、俺の気だけだったのか知らん」

首をふって、

「いやいや、そんなことはない。たしかにまっぷたつにされたような気持だった」

といいながら、また額の汗をぬぐい、

「しかしまあ、どうあろうと、それはすんだことだ。いよいよもって物騒な形勢だから、黙っているわけにはゆかない。いかに悪因ばらいとはいいながら、あんなやつに殺られてしまっちゃなにもならない。