Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.707 Zeichen · 20 Bildschirme
ひょろ松は、それに眼をつけると、肘でそっと顎十郎をついて、
「阿古十郎さん、あれが藤波ですぜ」
と、ささやく。
顎十郎は、ほほう、とうなずきながら、さりげない様子でお堂の右ひだりを眺めると、なるほど、いる、いる。
花売りにかったいぼう、手相見もいれば、飴屋もいる。そうかと思うと、子供づれで、参詣の善男子に化けこんでいるのもある。人数にしておよそ三十人ばかり、参詣の人波にまぎれながら、四方からヒシヒシとお堂をとりつめている。
顎十郎は、ああん、と口をあいて、大がかりな捕物を見物していたが、やがて、ひょろ松のほうへ長い顎をふりむけると、
「おい、ひょろ松、このぶんじゃ、どうやら、こっちの勝だぜ」
と、のんびりと言って、
「これだけ見りゃもう充分だ。……じゃ、そろそろひっかえすとするか」
子の日
弥太堀の大黒堂をあとにすると、顎十郎は、油町から右へ折れ、ずんずん薬研堀のほうへ歩いてゆく。
ひょろ松は、気にして、
「阿古十郎さん、これじゃア、道がちがやアしませんか」
といったが、てんで耳もかさず、矢ノ倉から毛利の屋敷のほうへ曲り、横丁をまわりくねりしたすえ、浜町二丁目の河岸っぷちに近いところへ出た。