Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.707 Zeichen · 20 Bildschirme

Aozora Bunko

見ると、大黒堂と堀ひとつへだてた向い岸。橋ひとつ渡ればすむところを、小半刻も大まわりをしてやって来たわけである。

ひょろ松はあっけにとられて、

「こりゃア、おどろいた。……ここは、弥太堀じゃありませんか。……昼日なか、狐につままれたわけでもありますめえね。……いってえ、どうしたというわけなんです」

顎十郎は、依然として無言のまま、先に立って弥太堀から横丁へ折れこみ、大きな料理屋のすじむかいの水茶屋の中へ入ってゆく。

ひょろ松はしょうことなしにそのあとについてゆくと、顎十郎は、ずっと奥まった葭簀のかげの床几にかけていて、ひょろ松がそのそばへひきならんで坐るよりはやく、囁くような声で、

「このへんに番所があるか……駕籠屋があるか」

いつもの顎十郎と様子がちがう。

ひょろ松は、けおされたようになって、思わずこれも小声になり、

「あの火の見の下が辻番で、駕籠屋も、つい近所にございます」

顎十郎は鼻孔をほじりながら、うっそりと小屋のうちそとを見まわしてから、

「……なア、ひょろ松、御府内の悪者は、その後まだ鳴りをひそめているだろう、それにちがいなかろう」

「へえ、その通りでございます」