Japanische Klassiker mit Furigana
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かぜのたより
風の便り
Lesen Sie 風の便り (かぜのたより) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.044 Zeichen · 66 Bildschirme
哲学とやらは如何。語学は。
告白すると、私は、ショパンの憂鬱な蒼白い顔に芸術の正体を感じていました。もっと、やけくそな言葉で言うと、「あこがれて」いました。お笑いになりますか。海浜の宿の籐椅子に、疲れ果てた細長いからだを埋めて、まつげの長い大きい眼を、まぶしそうに細めて海を見ている。蓬髪は海の風になぶられ、品のよい広い額に乱れかかる。右頬を軽く支えている五本の指は鶺鴒の尾のように細長くて鋭い。そのひとの背後には、明石を着た中年の女性が、ひっそり立っている。呆れましたか。どうも私の空想は月並みで自分ながら閉口ですが、けれども私は本気で書いてみたのです。近代の芸術家は、誰しも一度は、そんな姿と大同小異の影像を、こっそりあこがれた事がある。実に滑稽です。大工のせがれがショパンにあこがれ、だんだん横に太るばかりで、脚気を病み、顔は蟹の甲羅の如く真四角、髪の毛は、海の風に靡かすどころか、頭のてっぺんが禿げて来ました。そうして一合の晩酌で大きい顔を、でらでら油光りさせて、老妻にいやらしくかまっています。少年の頃、夢に見ていた作家とは、まさか、こんなものではありませんでした。