Japanische Klassiker mit Furigana
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ふうきんとさかなのまち
風琴と魚の町
林 芙美子
Lesen Sie 風琴と魚の町 (ふうきんとさかなのまち) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.372 Zeichen · 27 Bildschirme
ネルの着物を通して山肌がくんくん匂っている。雨が降って来ると、風呂敷で頭をおおうて、松の幹に凭れて遊んだ。
天気のいい日であった。山へ登って、萩の株の蔭へ寝ころんでいたら、体操の先生のように髪を長くした男が、お梅さんと云う米屋の娘と遊んでいた。恥ずかしい事だと思ったのか私は山を降りた。真珠色に光った海の色が、チカチカ眼をさした。
父と母が、「大阪の方へ行ってみるか」と云う風な事をよく話しだした。私は、大阪の方へ行きたくないと思った。いつの間にか、父の憲兵服も無くなっていた。だから風琴がなくなった時の事を考えると、私は胸に塩が埋ったようで悲しかった。
「俥でも引っぱってみるか?」
父が、腐り切ってこう云った。その頃、私は好きな男の子があったので、なんぼうにもそれは恥ずかしい事であった。その好きな男の子は、魚屋のせがれであった。いつか、その魚屋の前を通っていたら、知りもしないのに、その子は私に呼びかけた。
「魚が、こぎゃん、えっと、えっと、釣れたんどう、一尾やろうか、何がええんな」
「ちぬご」
「ちぬごか、あぎゃんもんがええんか」
家の中は誰もいなかった。男の子は鼻水をずるずる啜りながら、ちぬごを新聞で包んでくれた。