Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふうちそう

風知草

宮本 百合子

Lesen Sie 風知草 (ふうちそう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.107 Zeichen · 88 Bildschirme

Aozora Bunko

焼跡にかこまれたその界隈は、初冬のしずけさも明るさも例年とはちがったひろさで感じられた。夜になると、田端の汽車の汽笛が、つい間近にきこえて来た。

「久しぶりで、たっぷり炭をおこしてあげたいけれど、あんまりのぞみがないわ」

「いいさ。寒けりゃいくらでも着られるだけ結構なもんだ」

ペンをもったなり口を利いていた重吉は、又つづきを書きはじめた。長い年月、ほんとうに温く、人間らしくあついものを食べることもなく暮して来た重吉は、今のところ、何でもあつくして、それからたべるのが気に入った。揚げたての精進あげまで、

「やくと、なおうまいね」

電熱のコンロに焙ってたべた。

「あつくしようよ」

おつゆでも、お茶でも、生活の愉しさは湯気とともに、というように、あつくするのであった。ひろ子には、そういう重吉の特別な嗜好が実感された。さっき、コンロに湯わかしをかけたとき、

「たしかに俺はこの頃茶がすきになったね」

重吉が、自分を珍しがるように云った。

「もとは、ちっとも美味いなんと思わなかったが……」

「この頃はみんなそうなのよ。ほかに何にもないんですもの。お茶の出しがらの葉っぱ、ね。