Japanische Klassiker mit Furigana
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かぜたちぬ
風立ちぬ
堀 辰雄
Lesen Sie 風立ちぬ (かぜたちぬ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.998 Zeichen · 108 Bildschirme
「ちょっと起きて見たんだけれど、すぐ疲れちゃったわ」
そう言いながら、彼女はいかにも疲れを帯びたような、力なげな手つきで、ただ何んということもなしに手で弄んでいたらしいその帽子を、すぐ脇にある鏡台の上へ無造作にほうり投げた。が、それはそこまで届かないで床の上に落ちた。私はそれに近寄って、殆ど私の顔が彼女の足のさきにくっつきそうになるように屈み込んで、その帽子を拾い上げると、今度は自分の手で、さっき彼女がそうしていたように、それをおもちゃにし出していた。
それから私はやっと訊いた。「こんな帽子なんぞ取り出して、何をしていたんだい?」
「そんなもの、いつになったら被れるようになるんだか知れやしないのに、お父様ったら、きのう買っておいでになったのよ。……おかしなお父様でしょう?」
「これ、お父様のお見立てなの? 本当に好いお父様じゃないか。……どおれ、この帽子、ちょっとかぶって御覧」と私が彼女の頭にそれを冗談半分かぶせるような真似をしかけると、
「厭、そんなこと……」
彼女はそう言って、うるさそうに、それを避けでもするように、半ば身を起した。そうして言い訣のように弱々しい微笑をして見せながら、ふいと思い出したように、いくぶん痩せの目立つ手で、すこし縺れた髪を直しはじめた。