Japanische Klassiker mit Furigana
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かぜたちぬ
風立ちぬ
堀 辰雄
Lesen Sie 風立ちぬ (かぜたちぬ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.998 Zeichen · 108 Bildschirme
私は何も言わずに、その側に近づいた。
「まだ大丈夫よ」
彼女はつとめて微笑をしながら、私に聞えるか聞えない位の低声で言った。私は黙ったまま、ベッドの縁に腰をかけた。
「そこにいて頂戴」
病人はいつもに似ず、気弱そうに、私にそう言った。私達はそうしたまままんじりともしないでその夜を明かした。
そんなことがあってから、二三日すると、急に夏が衰え出した。
※(アステリズム、1-12-94)
九月になると、すこし荒れ模様の雨が何度となく降ったり止んだりしていたが、そのうちにそれは殆んど小止みなしに降り続き出した。それは木の葉を黄ばませるより先きに、それを腐らせるかと見えた。さしものサナトリウムの部屋部屋も、毎日窓を閉め切って薄暗いほどだった。風がときどき戸をばたつかせた。そして裏の雑木林から、単調な、重くるしい音を引きもぎった。風のない日は、私達は終日、雨が屋根づたいにバルコンの上に落ちるのを聞いていた。そんな雨が漸っと霧に似だした或る早朝、私は窓から、バルコンの面している細長い中庭がいくぶん薄明くなって来たようなのをぼんやりと見おろしていた。その時、中庭の向うの方から、一人の看護婦が、そんな霧のような雨の中をそこここに咲き乱れている野菊やコスモスを手あたり次第に採りながら、こっちへ向って近づいて来るのが見え