Japanische Klassiker mit Furigana
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かぜたちぬ
風立ちぬ
堀 辰雄
Lesen Sie 風立ちぬ (かぜたちぬ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.998 Zeichen · 108 Bildschirme
彼女はベッドに寝たままそれを受取ると、急に少女らしく目を赫かせながら、それを読み出した。
「あら、お父様がいらっしゃるんですって」
旅行中の父は、その帰途を利用して近いうちにサナトリウムへ立ち寄るということを書いて寄こしたのだった。
それは或る十月のよく晴れた、しかし風のすこし強い日だった。近頃、寝たきりだったので食慾が衰え、やや痩せの目立つようになった節子は、その日からつとめて食事をし、ときどきベッドの上に起きて居たり、腰かけたりしだした。彼女はまたときどき思い出し笑いのようなものを顔の上に漂わせた。私はそれに彼女がいつも父の前でのみ浮べる少女らしい微笑の下描きのようなものを認めた。私はそういう彼女のするがままにさせていた。
それから数日立った或る午後、彼女の父はやって来た。
彼はいくぶん前よりか顔にも老を見せていたが、それよりももっと目立つほど背中を屈めるようにしていた。それが何んとはなしに病院の空気を彼が恐れでもしているような様子に見せた。そうして病室へはいるなり、彼はいつも私の坐りつけている病人の枕元に腰を下ろした。ここ数日、すこし身体を動かし過ぎたせいか、昨日の夕方いくらか熱を出し、医者の云いつけで、彼女はその期待も空しく、朝からずっと安静を命じられていた。