Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

ひとつのエチケット

風雪のビバーク

松濤 明

Lesen Sie 風雪のビバーク (ひとつのエチケット) von 松濤 明 (まつなみあきら) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.561 Zeichen · 11 Bildschirme

Aozora Bunko

訊かれないことを少しでも口を滑らせるのは山男の恥だから――。それにしても要件は何だろうか?

「土合からです」

「東面ですね」

「え……」

「一ノ倉ですか」

「そうです」

問答はそこで終った。何の要件も切り出されなくて、私は少々張り合い抜けがした。

いきなり彼はおかしな質問をしたものだ。

「ウチの会の奴ら行ってませんでしたか」

「……?」

ウチの会? この男は一体何を言うのだろう。初対面の相手に自己紹介も抜きにして――

私がその顔を諳じていなければならない理由でもあると言うのだろうか? 私は急に不愉快に感じながら訊き返した。

「どちらの会ですか」

ところが驚くべきことに、これに対して彼は符牒をもって答えたものだ。私に判らない符牒で――。何か南瓜の親類のような符牒で――。けげんそうな私の面持ちをあわれむように彼は注釈を加えた。

「クラブです」

ああそうだったか、それなら最近聞いてはいるが、私はどうにも不愉快になってきたので口をつぐんでしまった。

山に行く人々がお互いに分けへだてなく話し合えることはできないのだろうか。そこには自ら礼儀が保たれねばならない。山に行く人間だからではない、人間だからである。