Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しょくま

食魔

岡本 かの子

Lesen Sie 食魔 (しょくま) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.911 Zeichen · 74 Bildschirme

Aozora Bunko

頼めば何でも間に合わして呉れる。こんな調法人をどこで歓迎しないところがあろうか。

彼は紛れるともなく、その日その日の憂さを忘れて渡り歩るいた。母は鼈四郎が勉強のため世間に知識を漁っていて今に何か掴んで来るものと思い込んでるので呑込み顔で放って置いたし、拓本職人の老爺は仕事の手が欠けたのをこぼしこぼし、しかし叱言というほどの叱言はいわなかった。

師匠連や有力な弟子たちは彼を取巻のようにして瓢亭・俵やをはじめ市中の名料理へ飲食に連れて行った。彼は美食に事欠かぬのみならず、天稟から、料理の秘奥を感取った。

そうしているうち、ふと鼈四郎に気が付いて来たことがあった。このように諸方で歓迎されながら彼は未だ嘗て尊敬というものをされたことがない。大寺に生れ、幼時だけにしろ、総領息子という格に立てられた経験のある、旧舗の娘として母の持てる気位を伝えているらしい彼の持前は頭の高い男なのであった。それがただ調法の与四郎で扱い済されるだけでは口惜しいものがあった。彼の心の底に伏っていつも焦々する怒ろしい想いもどうやら一半はそこから起るらしく思われて来た。どうかして先生と呼ばれてみたい。