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Japanische Klassiker mit Furigana

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くびをうしなったとんぼ

首を失った蜻蛉

佐左木 俊郎

Lesen Sie 首を失った蜻蛉 (くびをうしなったとんぼ) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.704 Zeichen · 10 Bildschirme

Aozora Bunko

の境遇の変わり方が、あまりにも激しい変わり方だった。

彼は現在の自分を、この首の無い蜻蛉のようなものだと思った。そして強い刺激に遇うごとに、局部の神経が僅かに動いているだけであった。

かなり資産のあった自分の家が破産して、親の胸から離れて実社会に飛び出して来てからは、実社会には、何等の武器的才能を持たない者を引っ掛けるために、一面に美しい蜘蛛の巣が張られていて、その見取り難い蜘蛛の巣に引っ掛かったが最後、蜻蛉程の力と勇気とを持って、その巣から遁れたにしても、すぐにその弱者の首を持って行く者がその下に待っているのであった。ああ局部の神経を強い刺激によって僅かに動かし得る首無しの蜻蛉となってしまったのだ……。

死! 死! 恐ろしい死……。一度堕落のどん底に沈んだ青年の彼は、実社会には死んだ人間であらねばならないのだ。どこへ行ったって職を与える処は無いのだ。真面目に働くと言っても幽霊の言葉を信ずる者は一人もいない。

愈々豚殺しにならなければならない運命が自分に迫っているのだ……と彼は思った。土工になるか人夫になるか車力になるか、それとも心の眼を瞑って豚を屠るか、総ては内心の争闘の結果に任せようと心の中に呟きながら、彼は首の無い蜻蛉を持ったまままた静かに歩き出した。