Japanische Klassiker mit Furigana
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えきふにっき
駅夫日記
白柳 秀湖
Lesen Sie 駅夫日記 (えきふにっき) von 白柳 秀湖 (しらやなぎしゅうこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.989 Zeichen · 69 Bildschirme
ないか」
私はあまりのことに口もきけなかった、大槻が笑いながら何か言おうとした刹那、開塞の信号がけたたましく鳴り出した。
四
品川行きのシグナルを処理して私は小走りに階壇を下りた。黄昏の暗さに大槻の浴衣を着た後姿は小憎らしいほどあざやかに、細身の杖でプラットホームの木壇を叩いている。
私は何だか大槻に馬鹿にされたような気がして、言いようのない不快の感が胸を衝いて堪えがたいので筧の水を柄杓から一口グイと飲み干した。
筧の水というものはこの崖から絞れて落つる玉のような清水を集めて、小さい素焼きの瓶に受けたので綰物の柄杓が浮べてある。あたりは芒が生いて、月見草が自然に咲いている。これは今の駅長の足立熊太という人の趣向で、こんなことの端にも人の心がけはよく表われるもの、この駅長はよほど上品な風流心に富んだ、こういう職業に埋れて行くにはあたら惜しいような男である。長く務めているので、長峰界隈では評判の人望家ということ、道楽は謡曲で、暇さえあれば社宅の黒板塀から謡いの声が漏れている。
やがて汽車が着いた。私は駅名喚呼をしなければならぬ、「目黒目黒」と二声ばかり戸を開けながら呼んで見たが、どうも羞かしいような気がして咽喉がつまった。