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Japanische Klassiker mit Furigana

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かけおち

駈落

佐左木 俊郎

Lesen Sie 駈落 (かけおち) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.287 Zeichen · 13 Bildschirme

Aozora Bunko

「菊! 父つあん、これがら町さ行って、髭剃って来っかんな。」

帰りの途を、途中まで来ると、春吉はこう言って町の方へ行った。菊枝はそれにも、仄暗い中で、眼で挨拶したきりだった。併し、それから先の夜路を、豊作と二人だけの語らいを語ることの出来るのは、彼女にとっては、嬉しいことであった。

「ほんじゃ、明日の二時の汽車にしんべかな?」と豊作は、前々からの約束を、そして今朝の取り定めを、再びそこに持ち出した。

「ほだね。ほうしっと、東京さは、何時着ぐの?」

菊枝の心の動きは、今は判然と決定されていた。誓ったとは言え、今朝の約束までには、自分の心のどこかに、自分ながら、疑わしい分子が折々頭を擡げていた。併し今は、なんの疑いもない決意に満たされていた。彼女は心に一種の衝動を感じた。全身が微かに顫えた。

「ほんじゃ、二時半までにゃ、停車場さ来んのだぞ。俺、先に行って、切符買って置っから…… ここの停車場でなぐ中新田停車場さ。」

「着物なんかはあ、なじょしんべね?」

「着物なんか、東京さ行ったら、俺、いい流行の着物買ってけるから……」

いつか二人の手は、仄暗の中に握り合わされていた。