Japanische Klassiker mit Furigana
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かけおち
駈落
佐左木 俊郎
Lesen Sie 駈落 (かけおち) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.287 Zeichen · 13 Bildschirme
「俺、小遣い銭などいらねえから、あのう、あの、パラソル買ってもらいでえな。」
菊枝は、長い間心に潜めていた要求を、初めて言い出していい機会が与えられたように思ったのであった。
全くそれは、長い間心の中に潜められていた切なる要求であった。もうみんな、既に二本のパラソルさえ持っている人があるのに、菊枝はまだ、死んだ母が遺して行った古い蝙蝠傘を持っているだけであった。明日の、六社様のお祭りのことを思うと、彼女はどうしても一本のパラソルがほしかった。
併し、菊枝がそれを言い出すと、爺さんや父親の、今の今まで彼女に示していた悦びの感情は、急に一変してしまったかのようであった。
「なに? パラソル? あの、紫色の、へんつくりんな格好の蝙蝠が?」と春吉は、驚きの眼をった。
「俺、紫色でねえで、水色のいい。紫色では、あんまり派手だから。」
「そんな贅沢なごとばり言って。昔なんか、蝙蝠だって、よっぽどいい人でねえど持たなかったんだ。贅沢ばり言って……」
爺さんは、眼を三角にして横を向いた。
「水色? あんなもんでも、随分高えもんだべでや?」
「五円ぐれえ出せば……」
「五円や?」