Japanische Klassiker mit Furigana
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げかしつ
高野聖
泉 鏡花
Lesen Sie 高野聖 (げかしつ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.264 Zeichen · 104 Bildschirme
一身をわれに任せよと言いし御者は、風波に掀翻せらるる汽船の、やがて千尋の底に汨没せんずる危急に際して、蒸気機関はなお漾々たる穏波を截ると異ならざる精神をもって、その職を竭くすがごとく、従容として手綱を操り、競争者に後れず前まず、隙だにあらば一躍して乗っ越さんと、睨み合いつつ推し行くさまは、この道堪能の達者と覚しく、いと頼もしく見えたりき。
されども危急の際この頼もしさを見たりしは、わずかにくだんの美人あるのみなり。他はみな見苦しくも慌て忙きて、あまたの神と仏とは心々に祷られき。なおかの美人はこの騒擾の間、終始御者の様子を打ち瞶りたり。
かくて六箇の車輪はあたかも同一の軸にありて転ずるごとく、両々相並びて福岡というに着けり。ここに馬車の休憩所ありて、馬に飲い、客に茶を売るを例とすれども、今日ばかりは素通りなるべし、と乗り合いは心々に想いぬ。
御者はこの店頭に馬を駐めてけり。わが物得つと、車夫はにわかに勢いを増して、手を揮り、声を揚げ、思うままに侮辱して駈け去りぬ。
乗り合いは切歯をしつつ見送りたりしに、車は遠く一団の砂煙に裹まれて、ついに眼界のほかに失われき。