Japanische Klassiker mit Furigana
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げかしつ
高野聖
泉 鏡花
Lesen Sie 高野聖 (げかしつ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.264 Zeichen · 104 Bildschirme
「どうして今時分こんなところにねえ」
渠は跫音を忍びて、再び男に寄り添いつつ、
「ほんとに罪のない顔をして寝ているよ」
恍惚として瞳を凝らしたりしが、にわかにおのれが絡いし毛布を脱ぎて被せ懸けたれども、馭者は夢にも知らで熟睡せり。
白糸は欄干に腰を憩めて、しばらくなすこともあらざりしが、突然声を揚げて、
「ええひどい蚊だ」膝のあたりをはたと拊てり。この音にや驚きけん、馭者は眼覚まして、叭まじりに、
「ああ、寝た。もう何時か知らん」
思い寄らざりしわがかたわらに媚めける声ありて、
「もうかれこれ一時ですよ」
馭者は愕然として顧みれば、わが肩に見覚えぬ毛布ありて、深夜の寒を護れり。
「や、毛布を着せてくだすったのは! あなた? でございますか」
白糸は微笑を含みて、呆れたる馭者の面を視つつ、
「夜露に打たれると体の毒ですよ」
馭者は黙して一礼せり。白糸はうれしげに身を進めて、
「あなた、その後は御機嫌よう」
いよいよ呆れたる馭者は少しく身を退りて、仮初ながら、狐狸変化のものにはあらずやと心ひそかに疑えり。月を浴びてものすごきまで美しき女の顔を、無遠慮に打ち眺めたる渠の眼色は、顰める眉の下より異彩を放てり。