Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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げかしつ

高野聖

泉 鏡花

Lesen Sie 高野聖 (げかしつ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.264 Zeichen · 104 Bildschirme

Aozora Bunko

「でも言われるまで憶い出さないなんざあ、あんまり不実すぎるのねえ」

「いや、不実というわけではないけれど、毎日何十人という客の顔を、いちいち覚えていられるものではない」

「それはごもっともさ。そうだけれども、馬上の合い乗りをするお客は毎日はありますまい」

「あんなことが毎日あられてたまるものか」

二人は相見て笑いぬ。ときに数杵の鐘声遠く響きて、月はますます白く、空はますます澄めり。

白糸はあらためて馭者に向かい、

「おまえさん、金沢へは何日、どうしてお出でなすったの?」

四顧寥廓として、ただ山水と明月とあるのみ。戻たる天風はおもむろに馭者の毛布を飄せり。

「実はあっちを浪人してね……」

「おやまあ、どうして?」

「これも君ゆえさ」と笑えば、

「御冗談もんだよ」と白糸は流眄に見遣りぬ。

「いや、それはともかくも、話説をせんけりゃ解らん」

馭者は懐裡を捜りて、油紙の蒲簀莨入れを取り出だし、いそがわしく一服を喫して、直ちに物語の端を発かんとせり。白糸は渠が吸い殻を撃くを待ちて、

「済みませんが、一服貸してくださいな」

馭者は言下に莨入れとマッチとを手渡して、

「煙管が壅ってます」