Japanische Klassiker mit Furigana
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きぶつどうじけん
鬼仏洞事件
海野 十三
Lesen Sie 鬼仏洞事件 (きぶつどうじけん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.468 Zeichen · 30 Bildschirme
三千子は、地上に落ちた番号札を、急いで拾い上げたが、胸が大きく動悸をうっていた。彼女は、戸の下りる前に、穴の内側を覗いてしまったのである。
(手首だった。切り放された黄色い手首が、この番号札を前へ押しだしたのだ。――そして“これを胸へ下げてください”と、その手首がものをいった!)
女流探偵風間三千子の背筋に、氷のように冷いものが伝わった。
なるほど、噂にたがわぬ怪奇に充ちた鬼仏洞である。ふしぎな改札者に迎えられただけで、はやこの鬼仏洞が容易ならぬ場所であることが分ったような気がした。
だが、風間三千子は、もう訳もなく怖じてはいなかった。彼女は、女ながらももう覚悟をきめていた。一旦ここまで来た以上、鬼仏洞の秘密を看破するまでは、どんなことがあっても引揚げまいと思った。
入口の重い鉄扉は、人一人が通れるくらいの狭い通路を開けていた。三千子は、胸に番号札を下げると、その間を駆け足ですりぬけた。
ぎーい!
とたんに、彼女のうしろに、金属の軌る音がした。入口の重い鉄扉は、誰も押した者がないのに、早もう、ぴったりと閉っていた。
ふしぎ、ふしぎ。第二のふしぎ。
彼女は、しばらく、その薄暗い室の真中に、じっと佇んでいた。