Japanische Klassiker mit Furigana
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まぞう
魔像
林 不忘
Lesen Sie 魔像 (まぞう) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 131.494 Zeichen · 260 Bildschirme
お絃は、お燗を引き上げた指先を、熱かったのだろう、あわてて耳へ持って行って、貝細工のような耳朶をつまみながら、
「そうかえ。それは便利なものだねえ。それで何かい、きょうはその腕がピクピクしているのかえ」
笑って訊いた。なるほど、そういうお絃の右の手の甲には、御意見無用、いのち不知と、二行に割った文身が読めるのだった。
「アハハハ」茨右近は、顔に似げなく、豪快な笑い声を揚げて、「それがヨ、今日は朝からピクピクしつづけているんだ。見ねえ、あんまりピクピクするもんで、酒がこぼれて、さかずきが持てねえのだ」
右近は、酒杯を持った手をわざとふるわせて見せた。黄金色の液体が杯のふちからあふれ落ちて、右近の手をつたい、肘から膝へしたたっている。
「お? いけねえ、何か拭く物、ふくもの――」
「それ御覧、お米の水を、何だねえ、もったいない。着物だって、たまらないじゃないか。そんな真似をして見せなくても、わかっているのに。ほんとに、お前さんみたいに、世話の焼ける人ったらありゃアしない。さ、これでお拭きよ」
ポンと投げて渡したふきんが、右近の顔に当たる。そいつを無造作に掴んで、そこらをふいている可愛い男の顔を、お絃は、食べてしまいたそうに、うっとり見惚れていようという、まことに春風駘蕩たるシインだ。