Japanische Klassiker mit Furigana
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さかなのえさ
魚の餌
梅崎 春生
Lesen Sie 魚の餌 (さかなのえさ) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.827 Zeichen · 10 Bildschirme
今海面を見詰めている兄の硬ばった顔は、痛いほど僕の視線を感じているに違いないのだ。僕は意地悪く、暫くじっとそこから視線を放さないでいた。そう言えば先刻、僕の傍で何かかすかな音がした。僕はそれに気をとめないでいたのだ。あの跫音は至極かるかった。そうか。餌を盗るのに、弟を手先に使ったな。そう僕は判断した。僕はそっと立ち上った。弟がその僕をちらと横目で見た。僕は竿をたたんで帰り支度をした。餌箱を魚籠にしまい、かぶっているムギワラ帽の中から煙草とマッチを出し、火を点けた。それからそろそろと子供たちの方に近づいた。
僕が近づくと、二人は急に緊張したようだった。かたくなに僕の方を見ないようにして、ことに弟の方は背をかたくして、あきらかにおそれに満ちた表情でそっぽを向いている。子供の餌箱の中には、僕のと大体同じ型の同じ大きさのゴカイが、ぐにゃぐにゃともつれ合っていた。そして子供の浮子がビクッと大きく動いた。
「そら、引いてるじゃないか」
そう僕は言いかけて、途中で止めた。兄は釣竿を上げようとはしない。じっとしている。浮子が動かなくなって、それからそろそろと竿を上げた。