Japanische Klassiker mit Furigana
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にしんぎょじょう
鰊漁場
島木 健作
Lesen Sie 鰊漁場 (にしんぎょじょう) von 島木 健作 (しまきけんさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.483 Zeichen · 49 Bildschirme
ここの海岸は西に面しているので、西から吹きつける疾風の時には大時化になることはわかっていた。漁夫たちはしかしすぐに引きあげるわけにはいかなかった。こういう時に一切の采配をふるう船頭の口は堅くとざされたままである。「鰊乗網中ハ風浪ノ危険ヲ犯シ、云々」の契約書の文言を彼は固く守っているのかも知れない。漁で沖合に碇泊中はたとえ時化になったからといって、すぐに上陸するということは船頭仲間の恥じとされている、という理由もあったろう。――それに今はちょうど鰊が網にのっているのだ。鰊汲舟は鰊で充たされていた。すくなくともその鰊を枠網に詰め終るまでは引きあげるわけにはいかぬ。
――ほんとうに大きな波は音も立てずに来た。舟のなかの身体が軽く持ち上げられたかとおもうと、すーっと山の頂上に押しあげられて行き、次の瞬間にはほとんど真逆様に奈落の底までおちよとばかり叩きつけられる。さすがの漁夫たちも目をつぶって舟底にへばりつくばかりだった。――今はもう引きあげるのほかはなかった。
まだ半分も詰め込みのすまない枠網は親舟に繋留して浜べへ急ぐことになった。鰊汲舟にはなお三石から五石ぐらいの鰊を入れていた。