Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
森啓之助らの姿を、ここまでつけてきたところで、皆目見当がつかなくなってしまった。と――狐格子の前に、何やら光る物が落ちているのに眼を止めた。
拾ってみると、滑かな瑁の笄。お米のものと判定するよりほかはない。
「あ! ことによると」と誓文神の狐格子をポンと押して覗きこんだ。
はたして、その中は抜け道の口であった。
祠の内は床板もなく洞然として、六尺ばかり掘り下げてある。そこを下りて、しばらく横へ歩いて行くと、案のごとく、仲間部屋の者が博奕や夜遊びに出入りする隠し道、弦之丞は、まんまと蜂須賀家の囲い内へ出た。
「しめた!」と胸がおどる。
物かげに潜んで、一応辺りを眺め廻すと、船手組のお長屋や役宅の棟が鉤の手なりに建てならび、阿波守の住む下屋敷の方へも、ここからは何の障壁もなく、庭つづきで行かれそうだ。
「いよいよ重喜の身辺に近づいて見ることができた。これも銀五郎の導きであろう」
弦之丞は、四囲鉄壁のこの屋敷内へ、あまりやすやすと入れたことを奇蹟に思った。
この隠し道を知ったとたんに、かれの心は、片恋のお米を不憫と思うことすら忘れていた。燃えているのは功名心、探秘心、それはお千絵様のためにである。