Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
旦那はとにかく、この宅助が承知しねえぞ」
優しい言葉に乗らないので、今度は脅しにかかっているらしい。
すすり泣きの声がする……。お米の姿が裸火にてらされていた。蛇のようにとぐろをまいている船綱のなかに身を埋めて、
「嫌です、嫌です! 阿波へなんか……」
「ちぇッ」と、宅助は舌を鳴らして、「旦那、とてもこいつア諦めものだ。卍丸が出るまでに、お目付へ知られては一大事、いっそのこと今のうちにバッサリ斬って、煩悩の根を断っておしまいなすったほうがようがすぜ」
ただし、脅かしに――と目まぜに知らせていうと、森啓之助も心得ている。大刀の鞘を払って、お米の頬へ切ッ尖を突きつけた。
「あ、不愍な……」と外にいた弦之丞、助けてやる工夫はないかと、綱倉の戸へ抜足さしてゆくとまた、それに添ってよれてゆく一つの影。
不寝の番の武士であろう。ジ――と隙をうかがって、
「うぬ! 曲者ッ」
気殺の声と早技。
弦之丞の脾腹を狙って、りゅうッと突きだした手槍のケラ首! 対手をはずしたか、ぶすッと白壁へ刺し込んだなと思うと、法月弦之丞の姿は、時すでにそこにあらず、どう切られたものか藩士の侍、槍をつかんだまま肩口柘榴なりに割れている……。