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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

弦之丞はそれを味得していた。

今――。

彼は、無銘二尺七、八寸の大刀を静かに抜かんとしている。一人と一人との立ち合いなら別だが、衆に囲まれてしまった時は、この抜く時があぶない! いかなる居合の達人にしても、ここは毛ほどの隙――隙といい得なければ手塞ぎが生じる。

両面の剣が、その虚につけ入ってくるのは必然だ。こう張りつめた殺気というものは、瞬間、そこに剣もなく人もなく音もなく、ただ悽愴な鬼気だけがシーッと凍りつめてくる。

ブルッと動く太刀尖は見えても、容易に手元へ斬りこんで行かず、キラリと光流を閃めかす槍の穂も、無碍にはさっと突いてこない。

一つは弦之丞が、々たる眼くばりのみで、柄に手をかけたまま抜かずにいるのが、かえって無気味であったかもしれない。

こうして、五ツ息六ツ息する間がたつ……。

と、後ろの船で、長櫃の蓋を四、五寸持ち上げ、

「げ、弦之丞様――ッ」

と、お米が死身で声を揚げた。

弦之丞様――ッ、とお米が助けを呼んだのと、天堂一角の構えていた槍が、ダッ――と彼の右へ向って突き出されたのと、ほとんど同時。

だが、その槍の穂がくるより早く、弦之丞は刀の柄をつかんだまま、踵を蹴って左へ跳び、同時に鍔鳴りさせて一刀を抜き払った。