Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
お綱が前に貸しがあるので、今日はどうでも取ってくるといって出たから、あの女のことだ、多分、居催促をしているだろう。――こういう道筋を辿って、お十夜孫兵衛、ここへゆらりと現れたものである。
そこで様子をうかがえば、お綱はたしかにこの荒屋敷の中にいる。さっき、チラと洩れてきた爪弾の音でも知れる。だが、旅川周馬とかいう奴、一体留守なのか、いるのだろうか。留守とすればいい都合だがな……と孫兵衛は、獰猛な猫が鶏の籠を巡るように、心の爪を研ぎ澄ました。
そして、いつか懐手のまま、広い屋敷の外廓を、ブラブラ一周り廻ってしまう。
さて、やッぱり妙策もない。
自体、はっきりと、女のほうからご免をこうむられているお十夜だ。どう懐手をしてみたところで、妙案のある筈もなし、にわかに、お綱の心を惹く手段のあろう理由もない。
だがお十夜は、ないとは決して考えていない。あると固く信じている。まだまだお綱をなびかせる方法は山ほどある! 金ずく。腕ずく。根気ずく。あるいは脅し。あるいはホロリとさせる泣き落し。でなければ迫害だ、呪い廻す助広だ。
「ふウン……いくらでもあるじゃねえか」