Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「お嬢様!」と強く叱った。
「こんな穴蔵の地獄に、なんの御未練でございます。御先祖様からの財宝を、残してゆくのが惜しいとでも……」
「いいえ、たみや、そんなものに未練はない……私はただ」
と、乳母の胸へ抱きついて、
「家に伝わる甲賀流のあまたの秘書を、そッくり、あの人非人の旅川周馬へ、残してゆくのが、お父上様にすまぬと思うて……」
「いえ。今の場合は、お嬢様という大事なお体にはかえられませぬ。家名は潰れても、あなた様さえお恙なければ、甲賀家のお血筋だけは残ります。あ! よいことがございます」
おたみはきっと心をきめて、
「あの悪人の手へ、すべての物を残してゆくよりは、お嬢様、いッそのこと、ここへ火を放けてまいりましょう」
「火を※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「エエ、惜しいようではござりますが、このお屋敷に隠されてある財宝や秘書を、周馬ずれの悪党にふみにじられてしまうよりは……」ホロリとたまる目がしらの露を押さえて――「すべてを灰になさいませ……そして、お嬢様という甲賀家の血だけをお残し遊ばしませ」
「たみや」
「お分りなさいましたかえ」
「わかりました、だけれど……」