Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
答えやあると待っている……。
だが、なんらの反応もない。
口を抑え、耳をすまし、目にしむ涙をこらえながら、しばらくジッとしていたが、かれの耳に聞こえるものは、ただムクムクと漂ってくる煙の音――、イヤ、煙に音はなかろうが、この時、万吉の神経には、たしかにそれがありありと聞こえた。
煙の底を這ってゆく――低い所ほど煙がうすい。次の間から次の間へと、目明しの万吉は、だんだん深入りをしていった。
「お千絵様ア!」
呼べど、答える声はない。
「お綱ア! お綱アーッ」
と二声三声。
もう、一番奥と思うところに、長廊下から杉戸があって、ピンと固く閉まっている。
何か、ぶちこわす物はないかと、あたりを撫で廻してみると、あった! あったが一枚の櫛である。これじゃあ戸をコジ開ける物にもならない。
しかし、ここに一枚の櫛が落ちていたのは、たしかに、女のさまよっていた証拠!
万吉は、いよいよあせった。と――廊下の一隅で、唐金の水盤らしいものにさわった。
それを持って、力まかせに、ドーンと突いて行くと、仕切戸がさっと開いた。
空洞のような橋廊下――、口を開くと一緒にその奥から、ムーッとするばかりな熱風が面を衝ってきた。