Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
さらに、首の抜けた柄杓の柄で、お綱はお十夜へ突いてかかった。が、身は綿のように疲れているので、苦もなくそれをもぎ取られた上に、ドンと一と突き飛ばされた。
乳のあたり!
お綱は、ふたたび起つ力がなかった。精がきれて、罵る声も出なかった。
「…………」
ただ、口惜し涙と怨みをこめて、カッと孫兵衛を睨みつけた。と、相手のほうも、女に反抗力がないことを知ると、ぬッと片手を懐へ入れて、物もいわずにその姿を見すえていた、いわなくッても分っているだろう、フフン、ざまを見やがれ――というふうに。
何の悲鳴も立てないので、万吉は、こうとは知らずに小舟を曳いて、近くの岸へその縄を絡げていた。
と、誰かの跫音が、後ろを抜けた様子なので、ヒョイと振りかえってみると、総髪にした若い侍が、いきなり拝殿の前へ寄って、気絶しているお千絵の体へ手をかけた。
その人影は旅川周馬であった。
万吉が、アッ――とおどろくまに、周馬は、何の拒みもない白いかいどり姿を横に抱いて、
「おい、お十夜! そんな女一匹を持て余して、いつまでグズグズしているのだ」
とばかり、一方へ声を投げながら、自分は自分の恋人を取り戻して、一足先にスタスタと急ぎだした。