Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「よけいなことを申すな」
片腹痛い――というふうに、旅川周馬、ゲタゲタ笑っているのである。
万吉はかッとなって、
「野郎ッ、どうでも渡さねえといや、十手にかけても受けとるからそう思え!」
「だまれッ、察するところ、墨屋敷へ火を放ったのも汝であろう」
「悪因悪果、天罰の火よ! 呪いの火よ! こうなるなア当り前だッ」
「よし! そう聞く上はなおのこと、お千絵を渡すことはならねえ。弦之丞に逢ったら、いってくれよ、世阿弥の娘のお千絵様は、旅川周馬が可愛がってやりますとな」
「エエ、しぶといことを吐かすな!」
「待てッ、万吉」
「くそッ――」とばかり、十手を真っ向に飛びかかッてゆくと、周馬はまたも五、六歩逃げて、キラリと前差の小太刀を抜いた。
片手に引っ抱えているお千絵の咽へ、その切ッ尖をピタリと向けて、
「おい」と周馬、万吉と切ッ尖とを、七分三分の眼くばりで、
「下手にあがくと玉なしになるぞ。どうせ墨屋敷の財宝を灰にして、破れかぶれになっている旅川周馬だ。さ、おれに指でもさすなら、差してみろ、その代りにゃ、貴様が一足ふみ出す前に、お千絵の咽笛を突きぬいてくれる」
ハッと思ったが、万吉は、ただちにそれが、周馬の狡い脅しにすぎないことをみやぶった。