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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

「ええ、そんなことに、気をとられている場合じゃない」

お綱は度胸をきめて、その侍へ近づいて行った。

と――都合よく、とある屋敷の角から、絢爛な乗物と供人が列をなして流れてきた。それがちょうど、出あいがしらであったので、前へゆく編笠の侍が、トンと足を踏み戻した。

「あっ――」

その瞬間に、お綱の体は、小石にでもつまずいたように、侍の横へ、フワリとよろけていったのである。

「おお」

「あぶない」

からんですり抜けた緋縮緬の蹴出しは、その時、もう二、三間行き交わしていて、

「ごめん遊ばせ……」

艶に笑って、チラとこっちへ振りかえった。

そしてそのまま、見返りお綱、燕の飛ぶかとばかり逸早く走って、あッと思うまに、宏壮な屋敷塀の角を曲って、ヒラリと姿を隠しかけた。

途端に!

ブーンと閃めいてゆく一本の短剣。

キラキラと風を縫って、飛魚のごとく飛んだかと見るまに、今しも、角をそれようとした、お綱の真白い踵のあたりへ――。

なんでたまろう。

「あッ!」といってよろめいた。

足をすくって、カラリと地に落ちた銀の光――短剣かと見えたのは、房のつかない尺四、五寸の十手であった。