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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

「ア痛ッ……」と足を押さえながら、お綱が身を泳がせるやいな、一足跳びに寄ってきた編笠の侍は、

「これッ」

と一喝して、お綱の利腕をねじ上げてしまった。

「掏摸だな汝は? 虫も殺さぬような顔をして、武士の懐中物をかすめるとは大胆な女じゃ」

「ア痛ッ、ア痛……旦那、今わたしの掏った紙入れは返しますから、どうか、このところは、見遁してやっておくンなさいまし……、どうしても、せっぱに詰まることがあって、魔がさしたのでございます」

「イヤ、ならぬ! たとえ一流の武芸者でも、めったに斬りかけられまいこの身の隙を計って、見事に、ふところの物を抜きおった汝の手際、出来心とは思われない……ウム」とうなずくと侍は、お綱の利腕を取ったまま、有無をいわせず、グングンと歩き出した。

そして、宏壮な一構えの大屋敷、漆喰塗の塀際に沿ってしばらく歩いたかと思うと、その屋敷の裏門へ、ポンと、お綱をほうりこんだ。

自分に屋敷は持たぬ――といったこの侍、お綱を引っ立てて、その裏門から、さッさと奥庭へ進んで行った。

しかもそこは、善美をつくした庭作り、丘あり池泉あり馥郁と咲く花あり、書院茶室の結構はいうまでもなく、夜を待つ春日燈籠の灯が、早くもここかしこにまたたいている。