Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
飛び下りた影を狙って、颯然たる一刀が月光に鳴り、斜めに腰を払ったが、ヒラッとかわして銀五郎が、無二無三の刃交を挑むと、対手はたちまち掠りをうけて後退り、耳から顎へかけて赤い一筋――森啓之助は危なくなった。
と――銀五郎の前へ、また一本の剣がふえた。九鬼弥助の助太刀である。いや、さらにまた後ろから、彼をうかがう者がある。天堂一角の見張りであった、まさに三方の敵に囲繞された銀五郎、髪はしどろとなり汗は粘く、だんだんと剣気に命を磨り減らされてゆくものか、月をうけた顔そのものも見る見る死相に変ってくる。
無残、ここに惜しい男一匹が、使命を半ばにしてズタ斬りとなるか、無念の鬼となろうとしているのを、世間は宵の絃歌さわぎで、河岸を流す声色屋の木のかしら、いろは茶屋の客でもあろうか、小憎いほどいい喉な豊後節――。
鍔から外れた切ッ尖傷、柄手を朱に染めつつ銀五郎、もう受身に受身を重ねてジリジリと生洲の縁へ追いつめられる。
機を計っていた一角は、その時自来也鞘の大刀をヒラリと放ち、殺気にからむ二ツの眼にトロトロと燐の炎を立てたかと思うと、ピュッと振りかぶってただ一気、銀五郎の後ろからズバッ――とやりかけた。