Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「そんなわがままをいって――、自分の体を自分で大事にしない者があるものか。さ、お服み、せっかく今、竹やがしぼってくれたのだから……」と、口へ持って行くばかりに、母の出した器の中の赤いもの。それは癆咳に利くというので、お米が人目に隠れて服むすっぽんの生血だ。
「いや、いや、今日は何だか見るのもいや……」
「何だえ、この娘は。まるで駄々ッ子のように」
「だって今日は嫌なんですよ」
「お前はまア、自分の命を惜しいとは思わないのかえ?」
「ええ、なんだか惜しくなくなりましたわ」
「ばか! 人の気も知らないで」
と睨んだ眼には女親の泪がいっぱい……。
「お米さん、逢いたいという人が来ましたぜ」
何も知らないで下働きの由造、ひょいとそこへ顔を出した。
「え、誰が?」
「この間きた蜂須賀家の森啓之助様。今日は一人で、二階へ上がって待っています」
美艶香の薫りが、そこへ忍びやかに流れてきて、
「森様、ようおいでなされました」と、お米の姿が、小座敷の萩戸へ透いて中へ入った。
とにかく、蜂須賀の船手の衆は、店にも大事な顧客であるので、いやいやながらも顔をだした。
待ちわびていたらしい森啓之助、