Japanische Klassiker mit Furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme
道の片端を走抜けようとしますと、また寄って来ます。嫌がるのが面白いのでしょう。私は顔を真赤にして逃出すので、夢中ですから引掻いたかも知れません。すぐ傍の料理屋らしい家の長い板塀に附いて、学校への道を左へ曲りますと、大きな声で笑うのが後に聞えました。帰りは友達と一緒ですし、逢ったことはありません。あまり嫌ですから、水戸邸の方から行ったこともありましたが、道のりが倍もあって寂しく、それに時間もかかりますので、仕方なしに駈抜けるのでした。
その頃の私の学校通いの姿は変なものでした。手織縞の著物はよいとして、小さな藁草履は出入の人が作ってくれたので、しっかり編んで丈夫だからと、お国から持って来たのでした。鼻緒はお祖母様が赤い切で絎けて下さるのです。日の照りつける時は、傘を持たせると忘れたり破ったりするからと、托鉢のお坊さんの被るような、竹で編んだ大きな深い笠を冠ります。その頃お兄様は絵をお書きになったので、その笠には墨で蘭が画いてありました。赤い切で縫った太い紐が附いていて、顎で結ぶのでした。荷物を斜めに背負って、ちょこちょこ出かけますと、茸が歩いて行くといって笑われますが、一向平気なものでした。