Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

それは、「一代還俗仰付けらるゝに依り、儒学を修業すべし」というのでした。還俗は医者を罷めることなのです。つまり僧と同じ扱いなのでしょう。後に男爵西周となったのはこの人でした。

祖父には人に譲らぬ気概があったので、時の典医だった堀、平田、加藤の諸氏と、脈について大いに論じた書類がありました。その頃の医者の診察は第一に脈を取り、舌を望むのです。手首を支えて動脈に触れるのですから、奥方とか姫君とかいわれる方々は、人に面を見られるのを厭って、糸で手首を結わえて、簾の間から出されるのを、膝行頓首して拝診したというのです。これを糸脈というのですが、恐らくは形式だけのものでしょう。傷ついて両手を包んだ人の脈をどうして見るかという説が出て、誰も頭を傾けた時、祖父は脈は心の響を伝えるものだから、顳、頸、股、脛、どこでも脈の通う所を押えれば知ることが出来る。手首は触れやすいために習となったのに過ぎぬと論ぜられたので、列座の人々は驚き呆れ、首肯する者、否定する者、暫く騒然としたそうです。

森の家を嗣いでから祖母を迎えましたが、最初に出来た長子が夭折し、次に生れた長女はひ弱くて心細かったのでしょう、その頃石見国美濃郡に高橋魯庵という人があって、その子の順吉というのが夙慧として聞えていましたので、貰受けて養子にしました。