Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

それらは袖廻りとか、絎物とか、当りの強くない処にだけ使うのでした。新しい糸は背筋、脇縫などに使います。それも大抵寸法を取って切り、右手で縫い始めて、終りますとちょっと左の手で針を持ちかえて、二針三針返し縫をすると糸がなくなります。「両刀使いですね」といいました。短い糸はつなぎ合せて玉にしてあり、それも木綿と絹とが別にしてあって、幾つか溜ると蒲団の被などに織ってもらいます。

老眼の度が進んだばかりでなく、白内障になって、片方は全く見えず、片方も視力が大分弱ってからは、絵のある本を二、三冊傍に置いて見ていられました。煙草は吸わないのですから、退屈そうでした。たまに私が子供を連れて行きますと、ひどく喜んで、「御馳走しましょう、栗を持ってお出」といって、栗の堅い皮を小刀でお剥きになります。「危いではありませんか」といいますと、「私は目で見ないで、勘でするのだから」と、なるほど上手になさいます。「渋皮はそっちで剥いて、御飯に焚ておくれ」と御機嫌です。

その間にも、よく鼻をおかみで、紙屑籠はじきに一杯です。「年寄は皆鼻をかむものだが、私の洟のひどく濃いのは、脳味噌がだんだん溶けて出るのらしいよ」